心に届く歌
「ごめんシエル。
別に話したくないことは話さないでも……」
「はい」
「…………え?」
「あなたの言う通りです。
全て、あなたの察した通りです」
シエルはそっと俯く。
長い前髪で顔全体が見えなくなってしまった。
「ここ最近はずっと…ゼリーだけ食べていました。
まともな食事は…ここに来て初めてです」
「シエル………」
「あなたにそうして名前を呼んでもらうのも…本当、久しぶりです」
膝の上握ったシエルの手に、涙の粒がこぼれ落ちる。
「本当……ここに来てからは泣いてばっかりです。
涙なんて……忘れたはずなのに。
ごめんなさい……ちょっと散歩してきます」
シエルはわたしに顔を見せないように俯いたまま、部屋を出て行った。