心に届く歌
-4- Butler
☆シエルside☆
「っ」
こぼれ落ちた涙を拭いもせず、僕は部屋を飛び出した。
走っただけで息苦しくなる貧血を抱えた体。
僕はやけに幅の広い廊下に座り込んだ。
生きて、と言われた。
わたしのために生きて、と。
生きる理由なんてなかった。
あの人たちの道具として生きてきたから、生きる意味なんてなかった。
いつ死んでも良かった。
だからかもしれない。
自分の左手首を傷つけたのは。
逃げ道が欲しくて。
逃げることなんて許されなかったから。
生きているのだと実感したかったのかもしれない。
前はあんなにも切りたいと思っていたのに。
切れなかった夜は苦しくて耐えられなかったのに。
今は。
「切りたいなんて、思えないよ……」
全てはエル様が。
エル様が僕を変えた。
少しずつ、ゆっくりと変えてくれた。