心に届く歌
「♪
太陽と月が巡り合う時
そこに生まれるのは優しさ
♪」
僕は誰も通らない廊下でそっと口ずさむ。
名前も何も知らない、どこで覚えたかもわからない歌。
ここしか知らないけど、何故か思った時に口ずさむ癖が僕にはあった。
「♪
太陽と月が巡り合う時
そこに生まれるのは優しさ
♪」
声を殺して泣きながら、僕はその歌を歌った。
何度も歌っていると、後ろから足音を感じて歌うのを止め振り向くと。
曲がり角からエル様が顔を出した。
僕は涙を乱暴に拭き、ゆっくり立ち上がった。
「シエル。探したわよ。部屋戻りましょ」
にっこり笑い、そっと僕の手を握り歩きだすエル様。
前触れもなく繋がれたことに驚いたけど、僕は恐る恐る握り返した。
嘘じゃない。
このぬくもりは、嘘じゃない。
本当のことなんだ。