心に届く歌
「でも僕……自信ないです」
「大丈夫、似合っているから。
わたしが保証してあげる」
シエルは「はぁ……」と返事する。
多分わたしが言っていることを信じていない。
「酷いわシエル」
「えっ!?あっ……ごめんなさい…」
「シエル、わたしは冗談で言ったのだから、そんなに落ち込まないで」
わたしの周りは常に完璧で強気な人が多かったから。
あまり「ごめんなさい」と謝られた経験がない。
わたし自身も謝った経験は少ない。
シエルの謝る姿は、本当に辛そうで、見ていたくない。
「でも似合っているんだから。
シエルはもう少し自信持って?」
「自信なんて……持てないです…」
「そんなにかっこいい素敵な服着ているのだから、いつもみたいに自分を否定するようなこと言わないのね」
「……はい…」
返事はするものの、多分自虐的な発言がなくなるのはまだ遠い先に思えた。
どうしたらなくなるかしら?と溜息(ためいき)をつきながら考えていると。
ノックが聞こえ、返事をするとお父様の執事が入ってきた。
「失礼致します。
お嬢様、シエルさんと一緒に来てください。
旦那様と奥様がお待ちでございます」
旦那様と奥様。
すなわちわたしの両親。
「……わかったわ。
シエル、行くわよ」
「……はいっ…」
シエルが両親と会うのはあの日、シエルが少しだけどノール村に帰った日。
わたしはシエルと一緒に、お父様の執事と歩いて行った。