心に届く歌
ドクの緑茶をゆっくり味わって飲んでいるうちに、
お母様と約束したお昼の時間になってしまったため、
わたしはドクの部屋を出て自分の部屋に戻ることにした。
「ドク、また来ても良いかしら?」
「ええ。いつでもお待ちしております」
まだ20代後半だというのに何故か白髪のドクは、にっこり笑いわたしを見送ってくれた。
机の上には国学の勉強の途中の形跡が残されている。
わたしは勉強をしたくないけどしているふりをするため、座ってペンを動かした。
だけど内容は全く入ってこない。
新しくなったばかりの参考書に書かれている90%の言葉は理解不明。
……本当、国王の名が相応しくないって言った過去の許嫁の言葉が可笑しいぐらいわたしに似合っているわ。
「エル。約束通りいてくれたのね」
「お母様」
ノックのあと入ってくるお母様。
その隣には高級そうなダークスーツを着崩した男の姿。
…予想通り、許嫁だわ。