心に届く歌





エル様は僕に色々教わったと言っていたけど。

僕だって色々教わっている。

本当……あの方のお蔭で僕は色々良いことづくしだ。




だけど同時に不安にもなる。

こんなにも僕は幸せで良いのかなって。

幸せな分、何か不幸なことが起こりそうで怖い。




「はぁ……」




息を吐いた所で思い出す。

鞄からドクさんが処方してくれた貧血の薬を取り出した。




重度の貧血持ちらしい僕は、治るまで薬が手放せない。

家に帰ったら30分ほどの点滴も受けないといけない。

朝昼晩のご飯後と合間に薬を飲むよう言われている。

苦いから本当は飲みたくないけど、飲まないと治せない。




休み時間というものが訪れたら薬を飲みにトイレでも行くか。

そう考えてポケットに仕舞うと、チャイムが鳴った。

思えば先生の話を全く聞いていなかった。




「おーい!!」




まぁ過ぎ去ってしまったものはしょうがないか、と立ち上がりトイレに行こうとすると。

青っぽい髪色の同じ制服を着た男子生徒が走って来た。




僕が編入した高等部のみ年上生徒が入学しても大丈夫だけど。

ほとんどが僕より年下の18歳。

だけどほぼ人付き合いをしてこなかった僕にとって、

目の前で何故か笑顔でニコニコ眩しいほど笑う彼は恐怖の対象だった。





< 163 / 539 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop