心に届く歌






「シエル!ここが体育館だ!!」


「そうっ……なんだ…っ」




体力はあったつもりだけど、彼の方があって僕は息切れしていた。

ドキドキと心臓が動くのも感じる。

ドクさんが言っていた動悸ってものだと思う。




「次はグラウンドだ!走るぞシエル!!」


「えぇっ…また…?……ちょっとまっ」




1歩踏み出した途端、ふらっとしてその場に崩れ落ちる。

息切れして動悸が激しくて、苦しい。




「シエル!?おいシエル!大丈夫かお前!!」


「へいっき……だいじょ…ぶ……いつものことだから……」


「次の授業まで時間あるから座ってろ」




ハイテンションな彼が隣に座る。

距離が近くて驚いて逃げたかったけど、そんな暇なかった。

座った途端眩暈が出てきて、僕はぎゅっと目を瞑った。




「シエル、保健室行くか?」


「行かなくて平気……」




保健室。

そこは僕にとって嫌な場所でしかない。




「はぁっ…はぁっ……は、ぁっ……」




僕は息を整えながら、ポケットに入っていて飲めなかった薬を飲んだ。





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