心に届く歌
「もしかして、わたしが妹みたいな存在で、離れて行ってほしくないの?」
「え?」
「だから嬉しそうじゃないの?」
「いえ……決してそういうわけでは。
わたくしもお嬢様が幸せになるのは願いますよ。
現に今のお嬢様は嬉しそうですから」
「でしょー?
この幸せ皆にも分けてあげたいわ!
同時に恋の素晴らしさも!!」
「……お嬢様…」
ドクが何故か辛そうな顔でわたしを見る。
「どうかした?」と聞く前に、衣擦れの音が聞こえる。
音のした方を見ると、シエルが身じろぎをして目を開けていた。
「シエル、もう起きたの?」
「え……?」
「まだ5分もあなた寝ていないわよ?
疲れているのなら寝なさいよ」
「……何だかエル様の声がして…」
「どうやらシエル様、お嬢様の声で起きてしまったようですね」
「うぅ……ごめんなさいシエル。寝ていたのに妨げてしまって」
「いえ……気にしないでください…。
もう体調は大丈夫ですから。
……どうしてあんなに騒いでいたのですか?」
長い前髪の向こうの目が、わたしをしっかりと見つめる。
わたしは唾を飲み、そっと微笑んでシエルに気持ちを伝えた。
「気付いたのわたし。
どうしてこんなにも気になるのか…その答えが。
シエル。わたし、あなたのことが好き」
緊張なんていらなかった。
そんなことよりも今は、自分の素直な気持ちを伝えたかった。
感じたことのないあたたかな気持ちを、シエルに。