心に届く歌
「……お願い」
今にも息耐えてしまいそうなほどなのに。
目の前の女性はにこりと微笑んだ。
「お願い……この子を、お願い」
「いけません奥様。
奥様がこの子をお守りするのでしょう!?」
無茶なことを言っているな、と自分でも思う。
でも口が止まらなかった。
「……お願いね」
「奥様ッ!」
何度叫んでも。
大粒の涙が溢れても。
自分の声はもう、あなたに届かない。
「……必ずや。
必ずやわたくしがこの子を、お守り致しましょう。
それが奥様…あなた様の最後のお願いですから」
最後のではなく、最期のと自分の中で漢字変換をする。
だって奥様はずっと自分の中で生き長らえるのだから。
「……それでは参りましょうか…」