心に届く歌
「んじゃ夜、楽しみにしてるわ」
シャツのボタンを閉め、ジャケットを着て、ネクタイを緩く巻いたプーセは、
ニヤリと怪し気な笑みを浮かべてわたしの部屋を出て行った。
「……何でわたし、ソレイユ王国の次期国王なんて身分に生まれたんだろ」
わたしは自分以外誰もいなくなった部屋で独り言ち、
ベッドに近づきゆっくりと倒れ込んだ。
ベッドの布団がわたしを優しく包み込むけど、無意味に感じる。
「もう少しわたし、自由な恋愛したかったなぁ」
恋愛だけじゃない。
学校に行って友達だって作りたかった。
国王のひとり娘が学校に行くなんて許されないから、わたしは学校に行ったこともなければ友達もいない。
周りにいるのはわたしを“ソレイユ王国の次期国王”として見る家族と使用人だけ。
わたしを唯一ひとりの人間として見てくれるドクは異例。
ドクだけがわたしの唯一の友達。
不自由のない生活。
お金に困ることのない生活。
だけど縛られた生活。
決められた人生。
それは本当に、幸せなのかな。