心に届く歌
言葉は時に凶器なる、と誰かが言った。
わたしは今、それを痛感している。
「……え?」
「……迷惑、です。本当に」
「シエル……?どういう」
「迷惑なんです!!」
シエルは布団を跳ねのけ、わたしを下から睨みつけた。
「好き……なんて。
そんなの…そんな気持ち……迷惑です!」
「シエル!?」
「2度と…2度と言わないでください!
好きなんて言葉……僕にとっては害でしかない!!」
「シエル様」
そっとシエルの目線にドクがしゃがみ込む。
「それ以上言ってはいけません。
お嬢様が傷ついてしまいます」
「今後一切僕の前で言わないでくださいっ!!」
「シエル様っ」
「金輪際……その言葉を僕の前で口にしないでッ!!」
「シエル様っ!お待ちください!」
ドクの止める声を聞かず、シエルはわたしの部屋を出て行った。
言葉は凶器だと言った人、わたしは尊敬する。
だって、本当のことだから。
どんな刃物にも勝てない、言葉は凶器だ。
「……っ……ふぇっ……」
わたしはその場でしゃがみ込み、顔を隠して泣いた。
心が酷く、泣いていた。
凶器による、血を流していた。