心に届く歌
どれぐらい泣いたのだろうか。
気付けば泣き疲れて眠っていて、組み立て式のテーブルには夜ご飯が置かれていた。
まだ少し湯気は立っている。
この組み立て式テーブルは、シエルがこの部屋にいた時、一緒に夜ご飯を食べた時使ったもの。
なかなか広く、テーブルを挟んで食べる食事は久々だったから、楽しかった。
わたしは辛さを飲み込み、「いただきます」と食べ始めた。
「食べ終わったわ。取りに来てくれる?」
内線電話をしメイドに伝えると、すぐにお皿を取りに来てくれた。
来てくれたメイドは、以前木に登った時「うわー」と連発していた子で、
わたしは下げるのを見ながら聞いてみた。
「ねぇ。
シエルはちゃんと食べてるの?」
「シエルさんですか?」
わたしが村出身のシエルを家に居候させるとしたことは結構有名で。
紹介していなくても、家に仕える使用人全員はシエルを知っていた。
テストに受かったら、後々ドクの跡を継ぎ、わたしの執事になることも。
「シエルさんでしたら、お部屋でほんの少し食べたみたいだと聞いていますよ」
「ほんの少し…完食していないの?」
「ええ。
シエルさんのお皿を持って行ったメイドに聞いた所、あまり体調が優れないからだと言っていました」
「体調が優れないって……どこか悪いの?」
「だるいだけだと聞いていますが……」
「失礼致します」とメイドは部屋を出て行く。
わたしは居ても立っても居られず、シエルの部屋がある寮に向かった。