心に届く歌
相手はすぐに出てくれた。
『もしもーし?
珍しいねーエルちゃんから電話なんて』
「朝早くにごめんなさいアンス。
実はあなたにお願いがあるの」
『どうしたー?』
「シエル、朝ご飯を食べないで学校に行ったの。
何だか用事があるとか言って。
顔色があまり良くないってメイドが言っていたから、
出来ればアンス、シエルを気に掛けてやってくれない?」
『オッケー。
アイツ病み上がりだから今日俺休むと思ってたわ。
俺に任せておいてよ』
「お願いするわねアンス」
電話を切り、わたしはサンドイッチを再び齧(かじ)る。
無事なら良いんだけど。
2度と言えなくても、シエルは好きな人で大事な人。
辛い思いも哀しい思いもしてほしくない。
「シエル……」
昨日言わなければ、シエルがわたしを避けることもなかった?
シエルが朝ご飯を食べて学校に行くこともなかった?
過去に戻れたら。
わたしはあの言葉を、消し去ってしまいたい。