心に届く歌
「おーっシエル早いな!」
前髪を何度も手で撫でつけ、息を吐くと、アンスが教室に入ってきた。
「よっシエル!おはよう」
「……おはようアンス」
誰もいないので、アンスは本来の席ではない僕の前の席に座った。
「風邪治ったか?」
「うん。
昨日だいぶ休んだからね。
本当にありがとう、助かったよ」
「気にするなって。
あーにしても腹減った!」
アンスは机と机の間の通路に鞄を置くと、中からビニール袋に包まれたサンドイッチを取り出した。
ふわりと、焼き立ての良いにおいがする。
「俺今日寝坊しちゃってさー。
これシェフに朝ご飯に作ってもらったんだ。
シエルも食うか?」
「僕はいらない……」
昨日のことを思い出し、首を振って僕はペンを手に取り、ノートに走らせた。