心に届く歌
「……俺確かにエルちゃんのこと好きだったよ。
でも、エルちゃんが俺を恋人として見ていなかったから、それが辛くてやめた。
シエルが体験したことあるとかないとか知らねぇけど、
好きな相手が自分を好きだと見てくれない…友達としか見てくれないのは結構辛いものだぞ」
「……そう、なんだ。
僕、そういうの体験したことないから……わからない」
「体験しねぇ方が良いよ。超辛いから。
一緒にいるの辛くなってきて、離れたくて婚約者の関係を断ち切ったんだ」
「…………」
僕の知らない、エル様。
エル様は、誰かを好きになったことがあるのだろうか。
そこまで考え、ハッとする。
昨日、好きだと言われたことを。
「……アンス。好きって気持ちは、余計じゃないの?」
「は?」
「生きて行くために、恋人って必要?
結婚相手って必要なの?
好きなんて、そんな気持ち……無駄じゃないの?」
「シエル?」
「いらないよね?そんな気持ち。
人生には余計……害でしかないよね」
「おいシエル?」
「害だよ害……そんなものいらない。
そんなもの必要ない。
害虫だと駆除されてしまうネズミと同じだよ」
「シエルっ!!」
隣のベッドに座っていたアンスが立ち上がる。
パイプベッドがギシリと音を立てた。