心に届く歌
転入してから2日目だけど、初日は迷うことなく僕と一緒に食べてくれた。
その時は気付かなかったけど、よく思い出してみると「一緒に食べよう」と言っていたクラスメイトはいなかった。
今だって、一緒に食べようと来てくれる。
「言わなかったっけ?
俺友達いねぇよ?」
「え?」
「いや……。
少し語弊があるかもしれねぇな。
話せる奴はいるけど、友達はいねぇよ?」
「……そうだったの?」
驚いた。
だって明るくて優しくて気遣いが出来る上、僕みたいな奴に話しかけてくれる。
友達に囲まれて話して笑っていても可笑しくはなかった。
「現に、話しかけてくれる奴とかはいるけど、昼飯はお前が転入してくるまでひとりで食べていたし」
「そうなの……?何かちょっと意外」
「1年とか2年の頃は、一緒に昼飯食べたり騒いでいた奴いたんだけど、3年になって気付いちゃったんだよなー」
「何に?」
「今まで話しかけてくれた奴が、俺の肩書きしか見ていないってことに」
「肩書き……?」
「そ。
俺こう見えて一応家の跡取り息子でさ。
しかも俺の家、結構でけー家なわけ。
クザン家って結構有名だぞ」
よく考えたら、いくら中心街に住んでいるとはいえ、
誰でも正統王位継承者のエル様の婚約者になれるほどではない。
それ相応の肩書きを持つ相手じゃなくちゃ、婚約者になれるはずなかった。