心に届く歌






「……でも国学が難しいのは事実なのよね」




わたしは開いていた本を閉じる。

そして広げたままの教科書やノート類を仕舞っていると。





「エル。入っても良いか?」


「どうぞ」




ノックの後入って来たのは国王であるお父様。

いつも傍らにいる執事に「待っておいてくれ」と言うと、ひとりで入ってきた。




「エル。今夜はわしと出掛けるぞ」


「え?」


「中心街に住むティラン伯爵がお茶会を開くそうで、是非わしとエルを招待したいと言っているのだ」


「ティラン伯爵がお茶会?」




珍しい。

お祖父様の代から繋がりのあったティラン伯爵の名前は知っていたけど、お茶会を開くなんて珍しいわ。

だってティラン伯爵はお茶なんて一切飲まないお酒好きだもの。

何の風の吹きまわしかしら?






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