心に届く歌
「今夜予定はあるかな?エル」
お父様に聞かれ頭に浮かんだのは許嫁のプーセ。
だけどわたしは首を振った。
「いいえありませんわ。
是非わたしも伯爵様のお茶会に参加させていただきますわ」
伯爵様には何回も会っているけど、何だか好きじゃない。
どこが好きじゃないのか聞かれたら答えられないけど、受け付けられない。
でもプーセと会うよりティラン伯爵に会う方が良いわ。
「わかった。
では今夜7時にわしの執事に迎えに来させよう。
急用が入ったら電話をしておくれ」
「わかりましたわお父様。
今夜7時、部屋で待っていますわね」
お父様は部屋を出て行き、わたしは部屋の中にある内線電話を手に取った。
受話器を取るだけですぐに誰かしらの使用人が出てくれる。
「わたしの許嫁のプーセさんにお伝えしてほしいの。
今夜用事が出来たから会う予定はキャンセルしてほしいってね」
『承知致しました、お伝えしておきます』
「よろしくね」
受話器を戻し、ガッツポーズを決める。
あんな変態男と夜出会うなんて嫌に決まっている。
ティラン伯爵、今日誘ってくれてありがとう!
絶対本人の前でお礼なんて言わないけどね。