心に届く歌
☆アンスside☆
「んじゃ、放課後連絡するわ」
「行ってらっしゃいませ、ぼっちゃま」
学校前まで車で送迎してくれる運転手に言い、俺は校舎へ向けて歩き出す。
「まだねみぃ……」と思いながら欠伸をしていると。
「あっ。あ……アンス」
「シエル!」
後ろから呼ばれて一気に眠気が吹っ飛ぶ。
シエルは小走りで俺の隣に並んだ。
「はよーシエル。今日は調子良さそうだな」
「うん。
いつもありがとう、今日は真面目に授業受けるよ」
「頑張れ!無理するなよ?」
「昨日の夜にアンスに復習しておいた方が良いって言われていた場所、
しっかり勉強してきたんだ。
だからアンスの力借りなくても今日は平気」
「それはそれで寂しいな。
親離れをする子どもを見る気分だ」
「何それ。親ってそういう気分になるの?」
「なるだろうな。
やっぱりずっと大事に育ててきた子どもだし」
そう言って気が付く。
シエルの顔が少し寂しさを訴えているように見えたから。
言わなければ良かった、と今更後悔した。