心に届く歌
「す、すまんシエル」
「謝らないで良いよ。
普通の家は、普通に子どもに愛情を注ぐことが出来るのだから。
僕の家が少し異常なだけ」
「シエル……」
「んじゃ、今日も頑張ろうか!」
笑いはしないけど、声は明るい。
無理矢理明るくしているのか?
そう思ったけど、考えるのをやめた。
「おぉ行くか!」
いつかシエルが言ってくれる日を、俺は待っていたいから。
大事な親友が、心から笑える日を、エルちゃんと一緒に俺も願っているから。
1限目から数学。
まぁどちらかといえば文系より理系の俺は良いけど。
俺は配られたプリントをさっさと解き終え、ふとシエルを見る。
シエルは熱心にペンを動かしていた。
この間みたいに固まりわかっていないようには見えない。
本当に家で真面目に勉強してきたんだ。
「んじゃセレーネ、答えてみろ」
「はい」
教師に当てられ前に行くも、シエルはしっかり問題を解き、丸をもらっていた。
満足そうに自分の席へ戻っていくシエル。
本当に、良かった。
俺は自分のことのように喜んだ。
ちなみにシエルが正解した問題は、俺は間違っていた。
些細な計算ミス。
……俺も、頑張らねぇと。
赤ペンで正解を書きながら、俺は密かに誓った。