心に届く歌
「ようこそおいでくださいました。
いやぁとても楽しみにしておりましたよ」
お屋敷の前で待っていたティラン伯爵は、
ワックスを塗りまくりテカテカと白髪を輝かせながら、
ニヤーッといやらしい笑みを浮かべてわたしたちを出迎えた。
同じ白髪でもドクとは大違い。
「プランタン国王、会うのは何ヶ月ぶりですかね?」
「約1年ほどだと思われます」
にっこり笑いながら握手をするお父様とティラン伯爵。
イマイチ話が噛み合っていないがお互いは気にしていない。
「これはこれはエル様。
大きくなりまして、ご立派になられましたね」
「ありがとうございますティラン伯爵様。
お元気そうで何よりですわ」
わたしの手を握りニヤニヤ気味悪く笑む伯爵。
この挨拶はわたしたちが会う度交わされる形上の挨拶。
会う度同じだからそろそろ飽きてきたけど他に言うことはない。
「ではどうぞ。
メイド長、おふたりの荷物を」
「はい」
伯爵の傍らに立っていたメイドの女性がわたしの鞄を持つ。
お父様は手ぶらなので、わたしたちは伯爵に続いて屋敷の中に入った。