心に届く歌
ティラン伯爵のお屋敷は大きいけど、どうも好きじゃない。
何だか全体的にジメジメしていて、不気味な雰囲気が漂う。
初めて来た時わたしは5歳で、あまりの気味の悪さに泣いてしまったことがあるほど。
それから毎年1回は必ず来ているけど、変わらない雰囲気に未だ慣れていない。
通されたのは応接間。
カーテンのない大きな窓には雨が打ち付け、
わたし好みじゃないソファーとテーブルが中央に置かれていて、
周りには薄汚い壺だのアンティーク人形だの統一感のない物がざっくばらんに置かれている。
「メイド長。
用意したお茶とウィスキーとお菓子を頼む」
「承知致しました。失礼致します」
機械のように言い機械のように頭を下げたメイドは、
応接間を出て行った。
やっぱりこの人はお茶なんて飲まないんだ。