心に届く歌






ティラン伯爵のお屋敷は大きいけど、どうも好きじゃない。

何だか全体的にジメジメしていて、不気味な雰囲気が漂う。

初めて来た時わたしは5歳で、あまりの気味の悪さに泣いてしまったことがあるほど。

それから毎年1回は必ず来ているけど、変わらない雰囲気に未だ慣れていない。




通されたのは応接間。

カーテンのない大きな窓には雨が打ち付け、

わたし好みじゃないソファーとテーブルが中央に置かれていて、

周りには薄汚い壺だのアンティーク人形だの統一感のない物がざっくばらんに置かれている。




「メイド長。
用意したお茶とウィスキーとお菓子を頼む」


「承知致しました。失礼致します」




機械のように言い機械のように頭を下げたメイドは、

応接間を出て行った。




やっぱりこの人はお茶なんて飲まないんだ。





< 27 / 539 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop