心に届く歌
「……っはぁ…」
「シエルっ」
息を吐いたシエルは、その場に座り込む。
わたしは震えた体をそっと抱きしめた。
「…打ち所が、悪かったんです」
「え?」
「いじめられても、関係なかったんです。
ただ、家でも学校でも居場所がなくなるだけで。
傷が体につくのは、慣れていましたから」
淡々と、わたしの腕の中でシエルは話す。
「だけど、ある日相手が、煙草を突き出してきて、僕の肌に当てたんです。
煙草の火が当てられるなんて、慣れてた。
両親だって僕に煙草の火を当てるのは日常茶飯事だったから。
痛くも熱くもなかった。
でも、煙草に点いた火を見た時、重なったんです。
両親の、僕を殴る時の恍惚とした笑みと、相手の笑みが、重なったんです。
僕は情けないことにパニックを起こして、気付いたら相手の肩を叩いて突き倒していました」
シエルの手がふわふわと宙を舞う。
ぎゅっとわたしは捕まえた。