心に届く歌
「ティラン伯爵。
今日はお招き頂きありがとう」
「いえいえ!
わしも丁度プランタン国王殿と話したかったので丁度良かった!
こちらこそ来て頂きありがとうだ」
「お話?わしにですか」
「ええ!
実はこちらをご覧頂きたい」
ティラン伯爵が取り出したのは1枚の薄っぺらい紙。
「実はこの間、わしの家で働く使用人がひとり辞めてしまいましてね。
新しい使用人を数人雇ったのですよ」
「これがそのリスト、ということですね」
「ええ。いかがです?」
「……これは、村の人たちを雇っているのですね?」
「ええ。
中心街に住む人ではつまらないと思いまして、村人も数人雇ってみたのです。
この間雇ったので10人目の村人となります」
「中心街と村の貧富をなくすためには良い機会になりそうですね。
交流を深めて行けば良い結果が生まれるかもしれません。
村出身の方の仕事ぶりはいかがですか?」
「……やはりそれは差がありますね。
中心街の者は学力も技術も礼儀も良いので文句ないのですが、
村の者たちは学力がなく技術もなく礼儀も常識以下。
耐えられずやめていく者も多くはありませんね」
お父様が渋い顔をする。
そりゃそうか……。
せっかく良い糸口が見つかったはずなのに。