心に届く歌





「僕が肩を押した相手は、教卓に頭をぶつけて、気を失いました。

出血はしていなかったんですけど、相手は反応しなくて、周りが一気に僕を人殺しだと言い始めて。

まだパニックを起こしていた僕は、人殺しだと言った周りの人たちも殴りました。

気付いたら、校長室に連れて行かれて、自主退学の紙にサインをしていました」


「何でいきなり自主退学の紙にサインなんて」


「相手の親も、周りの人たちの親も、当たり前なんですけど、とても我が子を可愛がっていて。

手を出した僕と同じクラスにさせるのが嫌だと学校側を保護者は責めました。

学校側は問題が大きくなる前に、味方になってくれる親がいない僕を退学させた方が良いと判断したみたいで…退学になりました。

親の力ひとつで、子どもの立ち位置って変わるんですね…」




諦めたように溜息をつくシエルを、わたしは強く抱きしめる。




「だから…正直、大人を、人を僕は信じられなくて」


「無理もないよ」



本来守るべき大人から攻撃されながら育ってきたシエルだ。

簡単に人なんて信じられないだろう。



「信じるって、好きだって、どういうことなんでしょうか…。
幸せに、僕はなれないのかな…」


「なれるよ。
わたしがシエルを幸せにするから」


「……嬉しい」



きゅっと弱くわたしの服を掴むシエル。




「あなたと一緒に、僕は、いたい……」


「わたしだって、シエルと一緒にいたいよ」




わたしはそれから数分後にドクが部屋に戻ってきて、

シエルが眠りに落ちるまで抱きしめ続けていた。




やっぱりわたし、シエルが好きだ。

シエルを幸せにしたい。






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