心に届く歌







それからお父様とティラン伯爵は

ティラン伯爵の家で雇った村人たちの実績を見ながら話をしていた。

興味はあるけどつまらない話なので、わたしが欠伸をしていると。





「そういえばプランタン国王。
この間あなたから送られた花瓶、飾ってみましたよ」


「おぉ」




わたしはふたりの視線が向かう先にある壺を見る。

この部屋に似合わない大きな壺。




「……花が生けてありませんが」


「勿体なくて花は生けずそのまま飾ってあります」


「……そうですか…」




どうやら薄汚い壺は壺ではなく花瓶らしい。

花瓶なのに花がないから壺に見えてしまう。

伯爵は国王からの贈り物に嬉しそうだけど、お父様はちょっとショックを受けている感じ。

花瓶をあげたのに花がなく壺に見えるんじゃ…確かにショックだよね。





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