心に届く歌
「シエル様、最初はお嬢様と話す際、怖がっていたでしょう?」
「……そりゃ、怖がりますよ…。
だって相手は次期国王様ですし。
僕みたいな奴隷が話しかけて良い身分じゃ……」
「奴隷……。
シエル様、ご自分を何だと思われているのです?」
「……何だろう。
生きる意味がわからないから、僕はエル様に叩かれたから。
自分が一体何なのか、わからないです」
「……そうですか。
話を戻しますと、最初は怖がっていたシエル様も、今ではエル様と怖がらずに、頼ることだって出来ているほど成長したでしょう?
それが、途方もなく嬉しかったんですよね、わたくし」
「どうして、嬉しかったんですか?
自分のことじゃないのに……」
「シエル様。
ひとつ、大事なことを教えておきますね。
大事な人の成長などは、嬉しいものですよ」
「……大事な人?誰が」
「シエル様でしょう。
シエル様がエル様と話せるようになり、執事となり、わたくしは嬉しいのですよ」
「……僕が、大事な人?」
本当、エル様と言いドクさんと言い。
何でここまで、優しいんだろう。
エル様は以前、一緒にいれば意味がわかると言っていたけど。
正直全く見えていないし、謎は深まるばかりだ。