心に届く歌
「わたくしは独身で、家族は両親のみ。
キョウダイもいずに一人っ子でしたから、
シエル様みたいな年下の方は可愛らしい兄弟に見えるのですね」
「……エル様は?」
「エル様は先ほどあなたが言っていたように、わたくしとの間にも身分差と言うものが存在致します。
勿論身分を超えた信頼関係はあると思いますが、
エル様とシエル様とじゃ、また別の関係なのですよ」
「…………」
「シエル様」
ドクさんは優しい笑みを浮かべながら、僕の頭をぽんぽんと優しく叩く。
前髪に少し触れビクッと震えたけど、手つきが優しくて安心した。
「何かあったら、エル様だけではなく、わたくしにも言ってください。
大事な人から頼られるのは、嬉しいものですよ」
「…………」
「少々クサいことを先ほどからずっと言っていますので、クサい言葉でしめますね?
シエル様。
ぼくは、あなたの幸せを願ってるよ」
突然のことに驚いている僕を見て、ドクさんは再びイタズラっ子みたいな笑みを浮かべると、
「何かあったら呼んでください」と踵を返し入り口へ向かおうとする。
「ドクさん!」
「はい?」
「……良いの?本当に頼っても」
呼び止められ振り向いたドクさんは、嬉しそうに笑った。
「いつでも待ってる」
パタン、と静かに扉が閉まる。
僕は、そこである目標を掲げることにした。
ドクさんみたいになりたい。
ああやって、誰にでも優しくて、素敵な人になりたい。
全てを包み込むような優しい笑みを、僕も浮かべられるようになりたい。
「……僕も、絶対、変わるんだ」
小さく呟き、僕は一旦眠ることにした。