心に届く歌
どれぐらい寝ただろうか。
午前中に帰ってきた僕が起きたのは、時々起きていたけど、完全に眠気が覚めたのは夕方だった。
エル様、帰って来ている時間かもしれない。
挨拶をしないといけない。
僕は急いで制服から執事服に着替え、洗面所で軽く身なりを整えていた。
執事見習いとしてリストに登録された日から、こうやって身なりを整えるようになった。
前まで自分の見た目なんて気にしていなかったのに。
人間らしさを取り戻している気分だった。
前髪以外を手で梳かし、全身鏡で着方が変じゃないか見ていると。
ノック音が部屋に響く。
……こんな時間に、誰だろう。
確認せず扉を開けた僕は、目を見開いた。
立っていたのは、ソンジュさんとベレイくんだったから。
「お話があるの。
少しだけアタシたちに時間ちょうだい」
嫌な予感しかしないけど。
僕は頷いて、エル様の部屋へ行く前に、ソンジュさんたちについて行くことにした。