心に届く歌
ティラン伯爵はその後もウィスキーをグラスに注ぎ一気飲みしては話すを繰り返し、
顔は当たり前だけど真っ赤になっていて、
性格も陽気になっているように見えた。
ふぅ、と何度目かわからない溜息をつくと、小さく控えめなノックが聞こえてきた。
ようやくお茶とお茶菓子が来たのかな?
「遅いぞ!入れ!!」
アルコールが入り声量が大きくなり伯爵が叫ぶ。
入ってきたのは先ほどのメイド長ではなかった。
「……失礼致します」
手にティーカップとお皿が乗ったお盆を震えた手で持つのは、男だった。
しかも多分年齢はわたしと同じぐらいかわたしより年下に見える。
痛んだ黒髪は肩までつくほど長くて、前髪も顔の半分を隠すほど長い。
異様なほど痩せ細った、失礼だけど同じ人間に見えないよこれは。
「……何故貴様が運んできた。
わたしはメイド長に頼んだはずだ」
「も……申し訳…」
「謝らなくて良い。
国王陛下と王女様を待たせているのだ、早くしろ」
「しょ…承知致し……」
「さっさと置いて出て行け。
ここは貴様が入れるような場所ではない」
少年の言葉を遮りイラついた口調で少年を睨むティラン伯爵。
人の話は最後まで聞けって言われなかったのかしら。