心に届く歌
「ソンジュさん、ベレイくん。
怪我はしているの?」
「首はもう大丈夫です。ベレイは?」
「ぼくもしていないです」
「……そこの黒服の人たちは、警察を呼ぶからそこで事情を話して。
部外者立ち入り禁止だから」
エル様は悪魔を見た。
「シエルは、しばらく自分の部屋にいなさい」
「……え」
「ドクをあとで行かせるから、怪我の治療をして。
終わったらわたしが良いと言うまで部屋にいなさい。
勝手に出て行くことは許さないからね」
「…………ま、待ってくださいエル様。
僕、学校とか紅茶の淹れ方とか学ばないと……っ」
「わたしが何とかしておくから、部屋にいて。
実質監禁みたいになっちゃうけど、ちゃんと部屋にご飯は運ぶから。
わたしが良いと言うまで部屋にいること」
「エル様、それって………!」
地下室を出て行こうとしたエル様は、振り向いた。
「何があったのか知らないけど、シエルが首を絞めたのは事実でしょう。
どうして今日やったの。
わたし、今日出掛けているからって言ったでしょう。
どうして大人しく出来なかったの。
具合悪かったんじゃないの?」
「エル様っ……!」
「ともかく部屋にいて。
わたしが良いと言うまで部屋から出ないで。
もうわたし今、シエルのことわからないよ」
「っ!!」
「シエルは人を傷つけないって信じていたのに。
良いシエル。
しばらくわたしの前に現れないで。
主命令だから、きちんと従って」
エル様は逃げるように地下室を出て行く。
悪魔は……シエル・セレーネは、言葉を失ったかのように、その場に座り込んでいた。
「……あんた、本当に役立たずの用なしなのね」
「…………」
アタシはベレイと共に部屋を出た。
このまま、壊れたら良い。
それが裏切者への、制裁。