心に届く歌
☆シエルside☆
部屋に戻った僕は、ベッドではなく片隅の床に座り込んだ。
自分自身を守るように、体を固くして丸める。
寒い日はこうして温度を逃がさぬよう、自分自身を守っていたのを思い出す。
「役立たず、用なし、無能、いらない……」
静かな部屋で、静かに呟く。
簡単に言葉は空気へと姿を消していく。
「シエル様?いらっしゃいますか?シエル様」
静かな部屋にやけに響くノック音。
僕は俯いたまま、その声に反応しなかった。
「入りますよ。失礼致します」
壁の向こうから見えてきたのは、ドクさん。
手には大きめの黒い鞄を提げていた。