心に届く歌
少年は扉の前で震えていたけど、ゆっくりテーブルに近づく。
そしてテーブルの近くにしゃがみ、よく少年が見えた。
病気かと思えるほど痩せ細った手足。
血色の悪い肌。
恐怖を感じているのか見えるほど震えていて、汗も多く流れている。
少年はソーサーを先にお父様の前に置き、その後でティーカップを上に置いた。
そして立ち上がり回ってからわたしの前にも同じよう、ソーサーを置き上にティーカップを乗せた。
それからまた入り口の方のテーブルに戻り、クッキーが乗ったお皿をテーブルの真ん中に置き、手を引っ込めようとした……
その時だった。
ガチャンッと音がして、お父様の前に置かれていたティーカップが傾き、バシャリと中の紅茶がお父様の膝にかかった。
「熱ッ!!」
少年がお皿から離した手を自分の方へ引っ込めようとした時、
何故か腕が揺れて、お父様のティーカップに触れてしまい、
ティーカップは触れた拍子に揺れ動き、傾いた結果お父様の膝に紅茶がかかってしまったのだ。
「お父様!」
わたしは鞄からハンカチを取り出しお父様の濡れた膝を拭く。
紅茶は淹れたてのようであつあつだった。
わたしはお父様の膝を拭きながら少年を見る。
当の少年は目の前にお盆を抱き、ガタガタ震えながら時折強く目を瞑っていた。
「……貴様ァ…国王様に何と言う無礼を!!」
「…ッ…申し訳ありません!」
「謝れ!主人命令だ!謝れ!!」
アルコールのせいで伯爵の怒りは凄まじい。
狂ったように少年に「謝れ!!」と叫んでいた。