心に届く歌
「……見つけた」
「え?」
人が少ないはずなのに、声がする。
振り向くと、誰かが立っていた。
逆光なため、顔がよく見えないけど、ふたりいるように見える。
「見つけたわよ」
「……え」
聞こえた声を、すぐに信じることが出来なかった。
「シエル。見つけたわ」
ビクッと体が震え上がり、思わず地面に座り込む。
嘘。
嘘嘘嘘、嘘、だよ。
嘘だと言ってよ。
「さぁ帰ろう、シエル」
確かにあの後の行方を聞いていなかった。
だけど、だけど、だけど!
「……お義父さん、お義母さん」
逆光を受け立っているふたりは。
紛れもなく、僕を養護施設から引き取り、養子にした育ての親。
僕を、今の『僕』にした相手。
「大人しくしていなさいシエル。
さもないと、どうなるかしらね?
わかっているわよね、シエル」
「抵抗したら、許さないぞ」
段々と近づいてくる、濁った瞳。
僕はこの濁った瞳が大嫌いだった。
見つめられるだけで、気が狂いそうだった。
バチッ!
「ッ!!」
スタンガンを首に当てられて。
僕は意識を失った。