心に届く歌







シエルは、ソンジュさんとベレイくんに呼ばれ、地下室に来た所殴られたりしたと言っていた。

ソンジュさんは、シエルに話があると言われ、いきなり首を絞められたと言っていた。




どっちを信じれば良い?

シエルの方が長く一緒にいるけど、だからソンジュさんを疑うわけではない。



疲れていたのに、あの映像がとどめとなったわたしは、

考えるのさえも疲れてしまった。

ひとまずシエルがソンジュさんの首を絞めたのは紛れもない事実だから、部屋にいるよう言った。

ずっと部屋にいること、なんて監禁みたいだけど、わたしにはその決断しか出来なかった。

怖かったから……あのシエルの氷のような表情が。




わたしはシエルを何も知らない。

シエルから言ってくれたことは数少ない。

全部全部、ドクやドクの知り合いや、アンスからの人から聞いた情報に過ぎない。




心を閉ざしてしまっているのはわかる。

心を閉ざさざるを得ない状態で過ごしてきたから。

シエルがあんな自虐的で、自分を否定するようなことを言うのも、ずっと否定され続けてきたから。

自分のことを話すのは勇気がいると思う。




だけど、わたしは話してほしかった。

全部人からじゃなく、シエル本人の口から聞きたかった。

首を絞めた理由も、あんな冷たい表情を浮かべた理由も。



でもシエルは何も言わなかった。

首を絞めた理由も、一切言わなかった。

それがわたしは、どうしようもなく寂しかった。





「……相手のこと全部知りたいって思うのは、我が儘なのかな」




わたしは何度目になるかわからない、大きな溜息をついた。




シエル、好きだよ。

シエルが何度『好き』を拒否しても。





< 323 / 539 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop