心に届く歌







『どうだエルちゃん!』


「シエルの両親、この間脱獄したんですって…。
今指名手配中で警察も調べてくれているけど…!

シエルがもし、セレーネ夫妻に見つかって、また暴力に合っていたら…!」




堪えたはずの涙がこぼれる。




「わたしがっ、シエルの話を聞いていたら、こんなことにならなかったのに!

シエルに言うべきは、部屋にいなさいじゃなくて、わたしの傍で大人しくしていなさいって言うべきだった!

シエルをひとりにさせないって、決めたのはわたしだったのに!!」


『エルちゃん!そんなに自分責めるな。
責めている暇があったら、もっと他にやるべきことあるだろ!?』




わたしは顔を上げた。

そうだ…わたしにはやるべきことがある。

シエルを救うのは、このわたし。




「向かうのはノール村のはず。
急いで行かなくちゃ…!」


『エルちゃん俺も行く』


「アンス!?」


『親友を救うのが、親友の役目だろ?』




わたしはアンスの言葉に頷いた。




「ドクに電話して、行けるようだったらもう1度かけるわ。
ドクは道を知っているから大丈夫よ」


『わかった。
ドクさんが無理そうなら、俺の家の運転手を貸す』


「ありがとう。じゃあすぐかけ直す」




電話を切ると、ノックもなしに扉が開いた。




「お嬢様!」


「ドク!
今すぐノール村に車を飛ばしてちょうだい!

途中でアンスも拾って行くわよ」


「事情は全て聞いております。
すぐに行きましょう」





わたしは厚手の上着を2枚取ると、急いで厨房に行き、あつあつのお茶を淹れてもらった。

あの日…初めてノール村に行った時も、こうして厚手の上着とお茶を用意した。

わたしは急いで、駐車場へと向かった。





「エルちゃん!
ドクさん、俺もよろしくお願いします」


「お乗りくださいアンス様」




アンスと途中で合流し、わたしたちはノール村に向かった。

シエル…お願いだから無事でいて!






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