心に届く歌






「ウィスキーをご主人様のお部屋にお運びした後、わたくしは国王様と王女様のお茶とお茶菓子を持ち、
再度ご主人様のお部屋にお運びしようと廊下を歩いておりました。

途中彼とすれ違ったのですが、彼はすれ違いざまわたくしに、
わたくしの代わりにお茶とお茶菓子を運ぶと言いだしたのです。

上手く運べてご主人様だけではなく、国王陛下と王女様にも気に入られたいからと。
気に入られることが出来たのなら、ご主人様の元で働かず、国王一家の元で働けると彼は言っておりました」


「ちょっ……ちょっと待ってください!」




花瓶の置いてあった縦に長い台に手をつきながら少年が立ち上がる。

痩せ細った手足が痛々しい。




「廊下ですれ違った僕に、面倒だから運んでと言って来たのは…メイド長でしょう!?」




少年とメイド長の意見が食い違う。

メイド長は少年を睨み、一瞬だけどふっと笑った。






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