心に届く歌
「お前は口出しするんじゃない。
メイド長、続きを話してくれ」
メイド長がふっと笑ったのに気付いていないらしいティラン伯爵。
メイド長は続きを話しだした。
「わたくしは勿論お断り致しました。
相手は国王陛下とそのご息女。
失敗は当然許されませんし、何より運びたい理由が評価を上げたいなどと言った不純な理由。
ですが彼はわたくしの止める声を聞かず、
わたくしの手から勝手にお茶とお茶菓子の乗ったお盆を奪い取り、
さっさと行ってしまわれたのです。
わたくしがあの時もっと強く止めていればこんな事態にはなりませんでした。
わたくしの責任でございます。
本当に申し訳ありませんでした」
後半は涙声で頭を下げるメイド長。
隣に立つ少年は何も言わず、ただ強く目をぎゅっと瞑っていた。
「……メイド長、わかった」
「ご主人様……?」
「……貴様、わしの名を汚すような真似しやがって」
ティラン伯爵は、冷たい声で言った。
酷く、冷酷な、氷よりも冷たい言葉を。
「貴様は、今日限りでクビだ」