心に届く歌
「どうしてっ…。
どうして誰もかれも僕を嫌うの?
僕をひとりにするのっ…。
もうっ…殴らないで蹴らないで役立たずなんて言わないで…ひとりにしないでっ…」
「シエル。
わたしはシエルをひとりにしないよ。
辛くなったらこうして抱きしめてあげる」
力をいれると、シエルも強く力をいれてくれた。
「っ……でも僕最低だよっ…。
エル様のこと信頼したいって思っているのに、
やっぱり裏切るんじゃないかって思っちゃう…っ」
「無理もないよ。
そう簡単に信じることは出来ないよ。
でも、ゆっくり信じてくれたら嬉しいな」
いつか、あなたの心からの笑顔が見えますように。
「最初そうだった…お義父さんもお義母さんも、ずっと笑顔で…。
手だって繋いでくれて、ご飯もくれて、幸せになれると思ってた…。
それがいきなり殴られたり蹴られたりしてっ…。
役立たず役立たず役立たずって……っ!
学校にも居場所なくて……っ。
先生たちも信用出来ないし……!
何で僕っ…生きていたのっ……」
背中をさする。
もう…泣かないでほしい。
あなたの涙をわたしは見たくないよ…。
「シエル、こっち向いて」
耳元で囁くように言うと、シエルが顔を上げる。
涙で真っ赤になっていて、わたしはそっと頬を伝う涙を指先で拭った。
「わたしが、シエルの生きる理由になる」
「……」
「シエルが生きている意味を、わたしが教える」
「……っ」
「だから、わたしの隣にいて。
辛くなったらわたしが助けるから。
いつかシエルが笑える日までね」
「……はいっ…」
シエルはわたしを抱きしめる。
「シエル。わたしは…」
好きだよ。
言おうとして留まった。
まだ…言うべきじゃない。
「わたしは、シエルが幸せになるのを待っているから」
「…待っていて、くれますか……?
いつになるかわからないけど…」
「いつまでも待ってる。
わたしがシエルの隣で、ずっと待っているよ」
シエルは大きく頷き、声を上げて泣き出す。
わたしはそのままシエルが眠りに落ちるまで、ずっと頭を撫でていた。
好きだよ。
いつかわたしの気持ちがあなたに伝わる日に、また言うから。
その時は、拒否なんてしないでね。
断っても良いから、拒否はしないでね。