心に届く歌






メイド長と少年が出て行き、ティラン伯爵は振り向いた。




「申し訳ありません国王陛下。
クリーニング代はわしが払わせてもらう」


「お気になさらないでください、ティラン伯爵」




そう言うお父様の笑みは引き攣っている。

そりゃそうだ。

お父様が送った花瓶を“趣味の悪い”と言われてしまったのだから。

言ったことを忘れてしまったティラン伯爵は、座り込んだ。




「あの男は村人なのですが……全くとんでもないことをやらかしてくれました。
中心街出身のメイド長の方がよっぽど役に立つ」




ブツブツあの少年への文句を言うティラン伯爵。

これが“村人を雇いました”と自慢気に言っていた伯爵の本音か。





ブツブツ文句を言い並べる伯爵。

それを苦笑いで聞いているお父様。



そんなふたりを横目に、

わたしはあの少年を思い浮かべていた。





何故だか、すごく気になるのだ。






< 38 / 539 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop