心に届く歌
-9-
☆エルside☆
「じゃあまだわかっていないの?」
『ああまだだな。
今早急に調べてはいる。
何分朝だったから、目撃者が少ねぇんだよな』
わたしはアンスに電話をかけていた。
理由は、ひとつ。
シエルが村出身だと明かしたA4サイズの紙を教室に置いた人を探すため。
「でも……心辺りあるのよね。
ちょっと確かめてみるわ。
アンスは引き続き調査をお願いね」
『オッケー』
電話を切り、わたしは眠るシエルを見る。
さっきまでゴロゴロするばかりで眠らなかったシエル。
先ほどようやく眠った所だ。
わたしの膝の上に頭を乗せて。
「ふふっ」
お風呂から上がったシエルは、眠たそうにしていた。
だからわたしがお風呂から戻る前に寝てて良いよと言ったのに、
戻ってきた時シエルはまだ起きていた。
『ごめんなさい……誰かいないと不安、で』
シエルはわたしを見上げて笑うわけじゃないけど、目を細める。
細められた目には、薄っすらと光る物。
不安だったのは本当なのだとわかる。
寝る準備をし、シエルの隣に寝転がったのは良いのだけど、
シエルは一向に寝ようとしなかった。
何度も欠伸を噛み殺し絶対眠いはずなのに、目を瞑ろうとしない。
瞑ることで暗くなる視界が怖くて仕方ないのだろう。
どうしたものか、と考えた末、わたしはシエルの頭を持ち上げ、
自分の膝に寝かせた。
シエルは驚き何度も「おります!」と言っていたけど、
抵抗しているうちに睡魔が大きくなり、ようやく眠りに落ちた。
今回は怖さより睡魔が勝ったらしい。
シエルが寝たのは良いのだけど、わたしは眠くなかった。
元々寝つきはあまり良くない方。
1時間ほどゴロゴロしていないと眠れないわたし。
目覚めているわたしは、基本夜行性のアンスに電話をかけた。
思った通りアンスは出て、近状報告をしてくれた。