心に届く歌







「ソレイユ王国と親交が深かったリュンヌ王国は、
太陽の国であるソレイユに対して、
月の王国って言われているんだ。

月の真珠の真珠がくくりつけられた紐も紺色で、
月が綺麗な夜を表している意味があるらしくて。

それで、月の真珠って言われているみたいだぜ?」


「へぇー。生で見てみたいわね、月の真珠」




月の真珠…………。




「というか、こういうの俺に聞くより、より多くの情報が入る奴いるだろ」


「え?誰かしら」


「プランタン国王様とイヴェール王妃様だろ」


「お父様とお母様?どうして」


「何だ知らねぇのかエルちゃん。
リュンヌ王国の王様と王妃様は、エルちゃんのご両親の親友だろ」


「えぇ!?」


「何でエルちゃんが知らないこと俺が知っているんだよ」




アンスは苦笑いを浮かべていた。




「あっ……でも言われてみれば、親交が深かったのよね。
友達でも可笑しくないわ」


「もしかしたら見つかるかもよ?裏」


「……裏?」


「シエル知らねぇのか?」


「そういえば言っていなかったわね」




エル様は立ち上がり、部屋に置いてあるピアノに近づく。

ピアノの存在は知っていたけど、弾いている所を見たことがなかった。



「これ見て」



エル様が渡してきたのは、楽譜だと思われる紙。

1番上には【心の歌ー表ー】と書かれている。



「お母様から渡された楽譜なの。
だけど、表の意味がわからなくて」


「だから、裏と……?」


「そうよ。弾いてみせるわね」




エル様は笑うと、楽譜を持ちピアノに向かう。

僕もゆっくり立ち上がり、足を引きずりつつ近づいてみる。



「シエル。ピアノに寄りかかっていて良いわよ」


「大丈夫です」


「俺も久しぶりに聞こうっと」



アンスは僕の手を掴み、自分の肩の上に置いて笑った。



「これだったら寄りかかれるだろ?」


「……良いの?」


「辛いだろ?良いに決まっているだろ」


「……ありがとう」


「ふふっ。じゃあ弾くわね」




エル様が細い指をピアノに滑らせ、綺麗な音色を奏でていく。

初めて聞いたけど、すごく心地良かった。





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