心に届く歌
「そういえば、お父様とお母様、知っているかしらね?シエルの歌」
「え?シエルの歌?」
「多分ですけど……知らないと思いますよ。
誰が作ったのかもわからないのですから」
「エルちゃんにシエル。シエルの歌って何だ?」
「聞いた方が早いわ。シエル、歌って」
「えぇっ!?」
エル様からの突然の要求に、僕は変な声を上げてしまった。
「シエルの歌声聞くの初めてだな!」
「アンス!僕歌わないよ?」
「シーエール?わたしの言うこと聞けない?」
「…………わかりました」
主様には逆らえないなぁ。
そう思いながら、僕はその場で小さく歌いだした。
「♪
太陽と月が巡り合う時
そこに生まれるのは優しさ
♪
…………あれ?」
太陽と月が巡り合う時……?
「エル様、アンス。
勘違いかもしれないのですが、太陽と月って……」
「「あっ」」
ふたりも気付いたみたいだ。
「太陽の国ソレイユと、月の国リュンヌ。
そして、シエルの歌の歌詞である、太陽と月が巡り合う時……」
「偶然、なのか?」
「シエル、その歌どこで覚えたか思い出せない?」
「わ、わからないです……。
気付いたらここのフレーズだけ覚えていたので…」
偶然?
それとも、必然?
「♪
太陽と月が巡り合う時
そこに生まれるのは優しさ
♪」
月の真珠……。
遺体のない、リュンヌ王国の王様と王妃様の子ども…。
僕がどこで覚えたかわからない歌……。