心に届く歌






「……シエル」


「はい」


「頭痛いの?」




言われて初めて、頭をさすっていたことに気がついた。

無意識のうちに泣いたり……僕ってば一体何をしているのだろうか?



「……月の真珠…」


「月の真珠がどうした?」


「…………どこかで、聞いたこと、ある気がして…」



ぎゅっと両手で頭を挟みこむ。




どこ?

どこで聞いた?

あの歌はどこで覚えた?







『キミを連れてきたのはな、傷だらけの男性だったんだよ。
キミが幸せになるよう、何度も何度も願っていたんだよ。

幸せになりなさい、シエル』




そう言って亡くなった、僕がいた施設の園長。

だけどその後……僕は……





『ふざけるな!このクズ!!』


『あんたなんて何で生まれてきたのよ!』


『この社会のゴミが!さっさとくたばれ!』


『可愛いオトコはね、高値で取引されるんだよ』


『これがこの家の儀式なのよ……』





散々両親に罵られ

散々工場長に写真撮られて

散々鉄パイプで使用人に殴られて……




「……ッ、…うっ…」


「シエル……ねえ、ちょっとシエル」


「ひっ…ぐっ、……あっ……」


「シエルしっかりしろ。おいシエル。聞こえているか?」





ボクは誰?

何のために生まれてきた?





「ッ……うああああッ!!」





様々なオトナの声が混じって

頭が割れるように痛んで




僕はそのまま意識を失った。






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