心に届く歌
「話は戻るけど、ソンジュとベレイがA4サイズの紙を教室に貼り付けた可能性は大きいな」
「わたしはそう睨むわ」
「……裏切り者、か。
シエルに何でそう呼ばれるようになったか聞きたいけどな」
「それはやまやまだけど…シエルが自分のこと話すかは。
いじめのことも、シエルが話してくれたんだけど、
それもソンジュさんがいじめのことを言ってくれなければ、
多分今もわたしはシエルがいじめられていた事実を知らなかったと思うわ」
「何で頑なに自分のこと隠そうとするんだか……」
アンスは眠っているシエルを見て苦笑いを浮かべる。
「しかし、シエル…冷たい目、信じられないな。これ」
アンスはわたしが渡したカメラを少し持ち上げる。
「これ、本当にシエルなわけ?」
「疑うのも無理はないわ。
でも、これは加工じゃなくて本当の映像よ。
ちゃんと調べてもらったからね」
「……なぁエルちゃん。
俺の勝手な予想だけどさ。
シエルがパニック起こした可能性はないか?」
「どういうこと?」
「さっきいじめのことエルちゃん話してくれただろ?
シエルは煙草を見せられた時、
親と重なってパニックになって相手を突き飛ばしたって言っていただろ?
シエル、ソンジュに地下室へ無理矢理連れて行かされて、そこでシエルの過去を思い出させる出来事があって、パニック起こしたって可能性はどうだ?」
「……否定出来ないわね。
むしろ、その線は良いかと思うわ」
「つまりだ!」
アンスは人差し指をピッと立てた。
「ティラン伯爵の元で、シエルはソンジュと何かがあった。
その後シエルはエルちゃんに救われ、ここに住むようになった。
だが、ソンジュがここに新人としてやってきてしまい、ある出来事でシエルを裏切者だと言っているソンジュが、シエルに復讐を企む。
地下室に連れて行き、復讐を計画していたソンジュは、実行した。
しかしそれによって、シエルはパニックを起こし、首を絞める結果となった。
シエルがボロボロだったのも、復讐の果てだったんだろうな」
「話の筋が通っているわね」
「だろ?
シエルが冷たい目をしたのも、パニックの結果だとしたら納得出来るだろ?」
「じゃあ、シエルに確かめた方が良いかしら?」
「……ひとつ恐ろしいのは、この話をすることで、シエルがパニックにならねぇと良いけどな」
「……気を付けてみるわ」
わたしは頷いた。
そして良いのか悪いのか、そのタイミングでシエルの目が覚めた。