心に届く歌
「シエル。聞いても良いか?」
「どうしたの……?」
隣に座ったアンスに少し驚くシエル。
アンスはシエルの背中をさすり、ゆっくり聞いた。
「話してくれねぇか?
ソンジュとの間に何があったのか」
「…………」
「お前が心配なんだよ。
これ以上傷ついてほしくない」
「……僕なら大丈夫だよ?」
シエルはそっと、アンスの腕を優しく掴み、自分から離す。
背中に当たっていたアンスの手は、離れた。
「色々アンスにまで迷惑かけてごめんなさい。
本当、どれだけ迷惑かけたら気が済むんだろうね……」
「シエル」
「っ……ごめんなさい。
困らせたいわけじゃないんだよ……。
でも、僕なら本当に大丈夫だから……」
「……じゃあ、ひとつだけ教えてくれ。
その足、どうした?」
「挫いたんだけど……?」
「どこで挫いた」
「…………っ」
「いつ挫いたんだ」
「……階段から落ちたんだよ」
「どこの階段だ」
シエルはアンスから目を逸らす。
普段ちゃんと目は見えないけど目を見て話すから、逸らしているときは何か隠している時だ。