心に届く歌
だけど、ある時工場長が、僕に氷水をかけながら言った。
「お気楽な奴だな、お前。
お前の両親から聞いたけど、殴ったり蹴ったりするのが愛情だと思っているんだって?
ばっかじゃねぇの?
お前が憎いから、アイツらはお前を殴るんだよ。
お前に死んでほしいから、アイツらはお前を蹴るんだよ。
愛情なんて信じて……本当、馬鹿みてぇだな」
桜吹雪が舞う季節だった。
僕は寒さに耐えつつ、工場長を見上げた。
「なんだその目は」って殴られたけど……。
何で。
何で言っちゃうの。
騙すことが出来ていたのに。
自分を騙すことで守っていたのに。
どうして真実を言っちゃうの。
知りたくなかった、目を逸らしていた真実を、言わないでよ。
後日。
酒瓶で殴られた僕は、朝起きることが出来なかった。
頭が割れそうなほど痛い。
床が真っ赤に染まっていくから、きっとまた両親に殴られる。
愛情だと思っていても、体は正直にガタガタ震えていた。
「キミ!大丈夫か!!」
頭から血を流していた僕を呼びかけたのは、警察官だった。
何で、警察が来ているのかわからなかった。