心に届く歌






工場長も近所の人も、僕が暴力を受けていることは知っている。

だけど、そんなの通報する人など誰ひとりいなかった。

自分だって暴力を振るう工場長が通報するわけないし、

近所の人たちは話のネタにするだけだから。




警察署に連れて行かれた僕は軽く、切った場所にガーゼを貼られ、両親の間に座った。

目の前には警察官が座っていた。




何故警察官が来たのかわかった。

誰かが通報したわけじゃない。

工場長が詐欺で逮捕され、工場を調べていたら書類が出てきて、

僕が働いていたことが発覚したためだった。




「なぜ学校に行かせないのですか」




警察官に僕が働いていた理由を責められ、口ごもる両親。

気付けば口走っていた。




「僕が、自分で働くって言ったんです。
両親を、楽にさせてあげたいから。

昨日疲れていて、倒れた所に、僕が昨日割ってしまったお酒の瓶が頭に当たって怪我しちゃったんです。

両親は悪くないです」


「キミ、それは虐待では?」


「虐待ってなんですか?
僕は暴力なんて受けていない。

早く帰りたいです」




警察官は納得していなかったけど、僕は両親と一緒に帰宅した。





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