心に届く歌
地下へ続くらしい階段には申し訳程度に電球が付けられていて、チカチカと切れそうな電球が辺りを照らしていた。
階段を踏み外さないよう、ゆっくり下りる。
誰かにもし会ったとしても、わたしは護身術を嗜(たしな)む程度だけど学んでいるので、
何かあったら正当防衛をする。
数十段も続く階段を下りた先には鉄の扉があって。
鍵はかかっていなかったので重たい扉を開けた。
そこは薄暗い階段とは違い、
蛍光灯が煌々と輝く何もない殺風景な空間だった。
床も壁も扉と同じく鉄で作られていて、少し肌寒い。
「……!」
わたしは何に使うかわからない空間を真ん中に向かい歩いた。
鉄の冷たい床の真ん中は、赤黒い血溜まりが広がっていた。
まだヌメヌメと輝いているので、出血したばかりの鮮血だと思う。
小さな頃木に登り、誤って落ちた時の血の色に似ている。
わたしは血溜まりをそのままに、地下空間から逃げ出した。