心に届く歌
「……あとセレーネ、良いお知らせよ」
「え?」
「ティラン伯爵様がセレーネを評価していてね」
メイド長は気持ち悪いほど微笑み、最悪なことを言い放った。
「1週間、実家に戻っても良いそうよ」
「……え?」
「久しぶりの帰省ね。
帰省出来るのは本当に珍しいのよ。
久しぶりに実家に戻って、家族と過ごしてきなさい」
「……す」
「明日から休んで良いそうよ。1週間経ったら来なさいね」
嫌です。
メイド長には聞こえなかったようで、部屋を出て行った。
「……す…嫌ですっ…嫌…い、や……嫌だっ……」
拒否したって無駄なこと。
僕はメイド長が置いて行ったお給料のはいった袋を片手に、ノール村に帰った。
「久しぶりねぇシエル」
「お義母さん……」
「久々だなシエル」
「お義父さん……いや…嫌だあああッ!!」
戻りたくない。
戻らなければ良かった。
僕は思い切り殴られ、封筒の中にはいっていたお札が舞い上がった。